雪が描かれた紅型衣裳/首里那覇鳥瞰図屏風/沈金・堆錦の漆器
特別展示室では、毎月「国宝 琉球国王尚家関係資料」の美術工芸資料および文書資料をとおして、琉球国王尚家の歴史と王国時代の遺物をご紹介しています。
今月は、尚家資料から「雪が描かれた紅型衣裳」をご紹介します。
亜熱帯性気候で一年を通じて温暖な沖縄では、雪はほとんど降りません。しかし琉球王国時代の紅型(びんがた)衣裳の中には、文様化された雪が描かれているものがあります。
雪の文様は、夏物の衣裳に使われていたり、暖かい色づかいで描かれていたりと、雪のイメージにそぐわない使われ方をされているものがあります。
紅型衣裳の図案は、日本や中国から渡ってきた絵画や染め物を参考にして考案されたといわれています。そのため、琉球では文様の形だけが取り入れられ、実際の季節感などから離れた、自由な組み合わせや色づかいになったと考えられます。
調度品は、先月から引き続き「首里那覇鳥瞰図屏風」と、「朱漆芭蕉万年青文沈金堆錦衝立」をご紹介します。
「首里那覇鳥瞰図屏風」は、王国時代の首里から那覇の前島付近までの風景を描いた鳥瞰図です。
よく見ると、右上の首里城正殿には鶴が描かれた簾がかけられています。これは王国時代に首里城に使用されていた正月飾りで、このことから正月の風景を描いている事が分かります。
「朱漆芭蕉万年青文沈金堆錦衝立」は、片面に芭蕉、もう片面に万年青の文様が沈金で描かれています。万年青は常に緑の葉を茂らすことから、長寿の象徴ともされています。
文書資料も先月に引き続き、修理を終えた資料を展示しています。
国宝「琉球国王尚家関係資料」のなかには損傷が資料があり、継続的に修理事業が行われています。修理済みの資料は展示公開され、複製を作りより多くの方々が資料を利用できるようにしています。
王国時代の貴重な記録と、精緻な美術工芸品をぜひご覧ください。